見極めvs割り切り
「早く用意しなさい!次郎」
「最近の親はゆとりがないねぇ」
「かーちゃんは ゆとり世代で育ってませんから!次郎だってゆとり世代じゃないでしょ!」
いくら怒ろうとしても拍子抜けをサラッと言う天然のキャラは次郎の強みだが、まだ扶養の身、かーちゃんは次郎の将来を諦められない。結局は次郎曰く"刑務所"に入所するその朝、準備を次郎にせかした。
高専の夏休みは10月までなので次郎の自分探しはまだ続き、キッザニア第3弾はチームラボの展示を見に行った。以前のブログ「模索」をご参照ください。第1弾は辻調理師専門学校、第2弾はライフイズテックの夏キャンプ)
チームラボの展示に行くきっかけはこの夏、太郎がインターン中に知り合ったチームラボの方で高専卒が何名もいると教えてくれて、その中に次郎の学校の先輩で2と4年に留年した人もいたと言う情報から。興味ある分野か?と聞くより体験が1番早いので、次郎を連れてお台場と豊洲の会場を一日で回った。体験型美術館、デジタルの美が織りなす芸術の世界観は参加型で2度と繰り返されない偶然で参加で表現される音と光による空間は異次元のゆらぎで癒しを感じた。また単なる美ではなく、その作品の背景となる解説も深く考えられていての表現なので体験する人の知識によっても感じ方が異なるだろう。展示の中でも特にen-tea-houseは次郎と話しが盛り上がった。
「この仕掛けって、何のセンサー?」
「重さかな?」
「重さなら、隣に置いてるスマホにも反応すらでしょ?器を認識してらのかな?」
「え、違うんじゃない、ガラスだし、移動したところにと花が咲くよ、液体に反応してるのかな?」
「ちょっとこぼしてみるよ」
「すごい、こぼしたところからも花が咲いたよ」
実験を繰り返しながら次郎は氷入りの水出しゆず緑茶を、かーちゃんは暖かいジャーマンカモミールほうじ茶ラテをチビチビと飲んだ。「センサーは光を当てると緑に見えるだよ」と言って次郎はスマホを懐中電灯にして天井を照らし始めた。あーでもない、こーでもないと考察を話しているとしばらくして2人とも花が咲かなくなった…温度センサーか!?飲み物はまだ残っている、冷たいものも、暖かいものも一定の温度内に入ると咲かないのか!?
https://en-tea-house.teamlab.art/jp/odaiba/
クリエイターになりたいとも言い出した次郎、高専出身の男子がインスタ映えの会場を喜ぶ女子の為に作り出す空間って、その作り出す過程を想像するとシュールで面白い。キッザニア第3弾では高専出身の可能性を体感。
お次は後期の授業が始まった太郎のオンライン授業を見せようと昼夜逆転の次郎を起こし 数分のぞかせてもらった。たまたまだったがC言語の授業、かーちゃんも大学で受講したが、パソコンで言うところの古典、面白さがわからない分野だが、何と次郎は太郎の授業の内容を見て一瞬で「あぁ、そこね、それってあーだっけ?」と太郎と話し始めた。次郎はすでに2年の前期でやった内容だったらしい。
「高専を辞めて高卒認定をとり、大学受験をするメリットないよね。またその授業を大学でやるの時間の無駄でしょ。」「…」
大学の授業参観で高専を辞めるのはもったいないと思わせる。
この夏、次郎と何度も話しをしてるうちに本音がわかり始めた。
「実は前期やばいと思って頑張ってやったんだけどついていけないんだよ、留年しちゃう。留年してる先輩がクラスに馴染んでなくて、あんな風になりたくない。それに専門すぎてやりたい内容じゃなかった。」
「太郎も大学の前期に数学を3つ落としたんだってさ、かーちゃんも大学2年の授業を2回も落として3年間同じ授業とテストを受けた科目もあったんだよ。落としていいから、単位を地道に取って行くしかないから、全部"A"取れって言ってないよ。ギリギリでいいから、何年かけてもイイから」不出来なかーちゃんの過去がこんな時に役立つとは大学の再履修の時にはわからなかった事だから失敗や辛い経験も無駄じゃない。
この件では留年も認める、逃げ出しちゃいけない事を伝えた。
だんだんと次郎の言い分を聞いていると「寮もイヤなんだよね。2人部屋で。先輩とかも面倒で、外に部屋借りちゃダメかな?」といった本音も出てきた。
この内容には かーちゃんの赤いランプが点灯しウーウーとサイレンが鳴った。絶対ダメ。学校が嫌いな訳ではない。これは次郎の本音の最も重要な言葉だ、見極めポイント!単に夜中までゲームをやりたいだけだ。前期は同学年と2人部屋、これからの後期は1年生と2人部屋。この話しにはトーチャンも乗ってきた。「俺なんか4年生と一緒だったんだぞ、お前は来年から1人部屋だろ!何言ってるんだ!」寮生活が楽しかったかーちゃんは「出身の違う友達の話が面白かったけどなぁ、通学ないんだから時間がいっぱい使えるじゃん、人よりできないなら時間をかけてやるしかないんだから」
寮のメリット、次郎の環境は悪くない事を認識してもらう。
もうすでに辞める前提で高卒認定資格試験の11月受験の願書を出した次郎だったが、何のどの話しが、刺さったか?わからないが次郎に考える隙を与えず刑務所に入所するしかない空気を入寮前夜にギリギリ与えた。
当日は冒頭の文章の通りのマイペースで、今回はかーちゃんとトーチャンの2人の送迎、入所前に学校近くの次郎が好きなラーメン屋で最後の食事とばかりに次郎の両脇をかーちゃんとトーチャンで挟みカウンターに並んで座りながら餃子を分けて食べた。
寮に着くと「お!次郎!」と何人もの友達が彼方此方でにこにこしながら声をかけてきた。次郎は前期終わる前に友達に学校辞める事を勝手に伝えていたんだなぁ。
退学しようとしてた事を知ってる ばぁちゃんは次郎が入所後心配してLINEで「大丈夫かい?」の返答に「割り切ったよ」の一言があったと教えてくれた。高専は楽しくないと言っていた次郎…楽しい時間を早く過ごしたいなら留年を1年にとどめて卒業するしかないだろう!