子育て実験中

忙しくて大学休学中の長男、勉強好きすぎて高専2年2回目を中退してゲーム三昧の次男、参考にならない兄2人を見てモヤモヤの高1女子、3人の個性を活かした分野を模索、どの育て方が未来を切り開くか?実験中!

アンインストール

その時は突然きた。

寮に帰る準備をしている次郎はスマホを2階の自分の部屋に忘れたことを思い出し「あ、携帯。取りに行ってくる」それに付け加えるように「あ、アンインストールもしてくるよ」と静かな口調で呟いた。あまりに自然でその言葉は特にかーちゃんに向けられたものでもなかったので素通りしてしまった。

 

2週間ぶりの週末、金曜に帰ってきた次郎は帰るなり自室でゲーム、土曜は好きなアニメの映画を友人と見に行き帰宅後も朝方までゲーム、日曜は午前中セーリングをやって午後は早退、寮に持って行きたい物を買いたいからと言って早々に帰ってきて門限ギリギリ間に合うだけゲームをしていた次郎。

高専を辞めずに刑務所に入ったんだから息抜きの週末くらいは自由に過ごせばイイ。かーちゃんは寝る前に次郎の部屋に立ち寄り「また違うゲームしてるんだぁ、どぉ?どんなん?」と相変わらず画面に向かってベッドフォンとマイク姿の次郎にかーちゃんは焦立ちもせず物分かりイイ親バージョンで話しかけたところ、「今、調子悪い、イライラしてるから出て行って」と焦立ちを感じない淡々とした口調で言われた。かえって不気味、なので素直にすぐに静か〜にドアを閉めて退散した。で、セーリング後も寮に帰る間際まで またゲーム…相変わらずの姿が当たり前なので特に何も感じず、門限まで間に合うように家を出て欲しいと思いながらかーちゃんはネットフリックスを見ていた。

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「じゃあ、帰るわ」「これが入る大きい袋なぁい?」と段々と寒くなってきたので暖かい洋服を持って行きたいと準備した。リュックを背負い、服の入った袋を持ったところで「あ、携帯…」本文の冒頭に戻る。

「アンインストールしてくる」の言葉をスルーしてしまったかーちゃんだったが、最寄りの駅に送る車の中で後ろに座っている次郎に「ところで何をアンインストールしたの?」と聞いてみた。

「ゲームだよ、全部消してきた」「?何で?」

かーちゃんは何も言ってない。むしろ高専の刑務所の寮に戻る決心をして脱走してこないだけよかった、週末はリラックスして好きなことしてイイというスタンスだった。

「帰ってきて1日8時間以上やったんだよ、でもレベルが上がらなかった。だからイライラしたし、そこまでだってわかったんだ。結局プロにはなれない。時間の無駄使いが虚しいって思ったんだ。」「でもイイの?仲良いゲームの友達とゲームの中で話しするのが楽しいんでしょ?」「昨日も一緒に映画行ったし、いつでも話せるからイイんだよ」「そう思えるようになってよかったね。でも寮は楽しくないんでしょ?大丈夫?」「人ってね、少し不便な環境の方が前進するんだと思うよ」「そっか、そうかもね。じゃぁ家じゃあ成長できないね。次郎には寮があって良かったね。」「でも、まだ休みの使い方が下手なんだよ」と次郎が言ったところで駅のロータリーの下車エリアについてしまった。"不便が成長を" "休みの使い方"なんて考えてたのか?次郎は時々ハッと言う哲学的なことを言う。経験から導く独自の真理は彼ならではなので独特な重みがある。次郎は遠回りしても体験しながら考えるタイプ。進む砂利道を親が予め舗装するのを拒む。

 

突然の宣言。退学しなくてよかったなぁーという安堵。本当に何がきっかけになるかわからない。今日はよかった、でも来週は?まだまだわからない。でも今日は強制されずに自らアンインストールしただけ成長したと思う事にする。「俺にとってはわかるまで1年半かかった」とも言っていた。だから来週「インストールしに帰ってきたよ!」と絶対に言うなよ!

 

後日談

花子にこの話をしたところ、「随分とプロきどりだね。来週はインストールしてるでしょ⁉︎」と冷静な酷評…また続編をお楽しみにぃ〜。