どうせ
ピンポーン!と夕方前、かーちゃんが玄関に行くと、突然庭からリビングの窓を開けて入ってくる友がいる。そうやって現れるのは彼女しかいない、魔女だ!3人の子どもの学校が誰も一緒でもないが共通の知り合いのママ友を通して3年前に知り合った、ママ友が乳がんで死ぬ2ヶ月前に…不思議な縁に感謝してる。「小さな頃から魔女になりたかった」という彼女の事をかーちゃんが話しをする時は通称"魔女"にしている。
魔女はかーちゃんより3歳年下で太郎と次郎の同年と小学2年生の3人の男子がいる。突然窓から入ってきた魔女は課題の提出がやっと終わった!という事で、建築士を目指すかーちゃんの勉強の激励にプリンを1つ持ってきた。魔女は小学校の先生になるために1学期、地元で教育実習を終えての最後の課題提出だったらしい。
「次郎が学校辞めるって言うの、どう思う、中卒だよ」庭で採れたブルーベリーでジャムを作る次郎を見ながら かーちゃんは話しを始めた。すると「イイのよ、どうせみんな死んじゃうんだから好きな事をすれば」と魔女。「だよね!」と明るく言いながら次郎は"ようやく分かってくれる大人がいた!"というように目を輝かせながらフライパンをヘラでかき混ぜていた。確かにそうだけど、だけど…と かーちゃんが思っていると魔女が「何かやりたい事あるの?次が決まるまでは今のままいた方がイイよ」とも加えてくれた。この言葉はかーちゃんも含め3人の大人から言われていたので次郎も少しトーンを落として「だね」と言うしかなかったようだった。「何やりたいの?」「わかんないけど、料理は楽しいかなぁ」「料理楽しいよね!料理イイよ!」と次郎と話し、夕飯を作るためにサクッと帰っていった栄養士でもある魔女はその夜、料理学校のオープンキャンパスの案内を"夏休みにいっぱいあるよ、いいタイミング"とのコメントと一緒にLINEで送ってきた。
前回次郎と話した時は「大学は行くよ」と言ってたけど、「社会にでたら出身校は関係ないでしょ?」とも話してくる次郎は早く世の中に出た方がイイのかもしれない。
3日後、模試を終えたかーちゃんは魔女にリフレッシュしたいとLINEしたところ「後で行く」と言ってナシとコンビニスイーツを持って庭からやって来た。2階にいた次郎を呼んで「オープンキャンパス行った方がイイよ、合う合わないは行かないとわからないから」と言いながら携帯で検索し「今日これからオンライン見学あるよ」「まず登録して」「まず中卒でも入れるか聞かないと」と せっかちなペースに乗せられるがまま次郎は料理学校に登録してオンライン見学を見て、LINEで学校担当者に学歴は必要か聞き、電話がかかってきてオープンキャンパス見学に交通費出すから見においでと言われるまでの展開になっていた。
次郎作バンズから作ったハンバーガーセット
中卒オッケー、原則18歳以上。
原則っていうのが気になり、高卒認定試験の検討も始め、成績表とにらめっこ、受験科目、日程の確認、と同時に料理検定もある事がわかり、「久しぶりにテンション上がってきた!」と次郎、「実はかーちゃんも楽しい!」と言ってしまっていた。
この時期に悩んでよかったのかもしれない。大学まで行ってしまったら流されて引き返せなくなってしまったかもしれないし、時間がもったいなかったかも。早めに高専で専門分野に触れたからこそはっきりわかったんだと思う事にする。大学生は楽しい事も多いので就活で自分を見つめる時に辛くなる事は想像できる。(参考映画"何者")
外出していた花子とパパがダイニングの私たちの話しにいつの間にか加わっていて「私も高校行ったら中退しようかな?」「高卒認定試験は車の車検と一緒だな、ディーラーでお願いする車検が高校で、認定試験が陸運局に直接持って行く感じだ」とパパ独特の解釈をしてた。
かーちゃんも受験生、いつでもやりたい事にチャレンジできる。やりたくないことがわかったのなら捧げる時間はもったいない。やりたくない事わかっただけで一歩進んだんだろう。
誰と比べ、何を気にしないといけないのか?
どうせ死ぬのだから主体は自分だ!