犠牲者
「やっぱり かーちゃんと話すと楽しいよ」週に1度の通学、駅へ送る車の中での次郎の言葉を複雑な気持ちで聞いていた。
「どおぅ?週1登校で県外からだし、友達できないよね?学校で…どんな事してんの?」とかーちゃんの質問に対し「勉強するモチベーションが保てない…早く寮に入りたい。楽しかったはずなのに…今ニートだよ俺。食事も寝る事も楽しくない。」と。
かなり重症だ。
外との関わりがなく、ひたすらパワーポイントで学習し、課題を提出する。自己が確立されていて、やる事が明確なステージにいる人間にとってはコロナ禍のオンラインは時間を有効に使う手段だが、多感な時期で出会いが未来を切り拓いていく若者にとって次郎の環境は苦しいだろう。
「でも次郎は破壊された世界に憧れあったじゃん…今それじゃない?」非日常の世界に夢見る若者らしい感覚を持っている次郎に聞いてみると「俺、犠牲者じゃん…経済まわってるじゃん。どうせならもっと破壊されて欲しい。」
あーなるほど、ゲーム発想ですな。自分はその場を見ていても一線を引いたところで破壊された世界を夢見てたのね。いわゆる傍観者で安全なところ。あまい!
でも、「食事も寝る事も楽しくなくって、かーちゃんと話しをする事が楽しい」なんて健全な高校1年生ではない。唯一楽しい時はゲームの中。あまりにかわいそうなので思う存分そのゲームを楽しんでイイが、そこは次郎のモヤモヤを解決する世界ではない。この環境下では覚悟をもって自分の世界は自分で作るようにしないと救われないんだよ次郎。
だから以前からバイトしろって勧めていたんだよ。学校以外の居場所。ようやくそれに気がついたのか単にお金がないからなのかはわからないがハンバーガーチェーンM社の面接に行ってきた。が落ちて、さらにショック。(落ちる人っているんだね。さすが次郎!ちなみに太郎は同じところを中3卒業した翌日に受けてバイトしてんだよね〜)
さあここで諦めたら自分の世界は作れない!もっと攻めて攻めまくれ!当面の課題はバイト先を作ること…頑張りなされ!